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Introduction

I'm in Your Mind Fuzz
"I'm in Your Mind Fuzz" from Discog
2014年10月31日発表
No.Track ListTime
1.I'm In Your Mind3:33
2.I'm Not In Your Mind2:58
3.Cellophane3:10
4.I'm In Your Mind Fuzz2:51
5.Empty4:10
6.Hot Water3:23
7.Am I In Heaven?7:05
8.Slow Jam 12:54
9.Satan Speeds Up3:39
10.Her And I (Slow Jam 2)8:15

プログレもメタルも微分音もない純粋培養な初期キンギザの傑作

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 かりやすい作品、と言えばキンギザ作品では本作"I'm in Your Mind Fuzz"が最もあてはまるのだと思います。この5thフルアルバムは、キンギザ史において"初期キンギザ"と分類できそうな時代のラストを華々しく飾る名盤です。初期の作品群は、正直言ってキンギザの歴史の中でもかなり混沌としていて、バンドの軸となる音楽性がまったくと言っていいほど掴めない困った時期です。もちろんこの頃の実験性がのちの完成度の高い作品に結実した部分もけっこうありますし、また固定化された狭量なパブリックイメージに囚われたくないというバンド側の意向もあったのだと思います。そんな中でまず、お、ちょっと分かりやすくて素直にかっこいいな、と思わせたのが3rd"Float Along/Fill Your Lung"、特にその1曲目、ライブ感に満ちたジャム形式のストレートなスペース・サイケである"Head On/Pill"ですね。そしてそのドライブ感/ハンマー・ビートの直進性/執拗反復によるトランス効果と、他の作品でみせていた時代錯誤なローファイサウンドメイク、パンキッシュなボーカルとギターエフェクトを組み合わせた初期の総決算的な作品が今作です。様々なジャンルの作品の影響が露骨に見えていた初期キンギザですが、この"融合"は彼らの音楽を"キンギザ以外のなにものでもないもの"というアイデンティティに昇華した記念すべき作品なのです。もっとも変わり者の彼らですので、その後も今作にまったく執着することなく、自由な"音楽の放浪"に旅立ってしまうのですけれども。しかしここで提示された彼らのアイデンティティは、旅の道中の様々な七変化と進化を自己を見失うことなく可能にした確固たる音楽的基礎として非常に重要な役割を果たしています。また、見逃せない要素として、今後展開する壮大な"Gizzverse—全キンギザ作品が共有する物語世界とキャラクター"の伏線が至る所に張られているということです。のちの大作と比べると饒舌さはないですが、そのぶん暗示的で意味深な歌詞が多く出てきます。思想としてもキンギザの哲学的な側面が強く出ており、彼らのマインドを手っ取り早く理解するのに最もよい作品なのではないでしょうか。ちなみに、今作は、曲を書いて、みんなでスタジオに集まり、リハして録音するという"普通の方法"で作られた最初の作品だそうです。おかしなバンドです。

全曲解説

 なんと言っても冒頭の"Mind Fuzz組曲"(M1〜M4)が素晴らしすぎます。 永続するミニマルな8ビートとはねるベースライン、シンプルなファズ・ギターの反復は強制的に身体と脳をドライブさせます。 最高にハッピーなM1"I'm In Your Mind"からシームレスにM2"I'm Not In Your Mind"にシフトすると、 リズムはそのままに先ほどとは打って変わり短調の怪しげな展開に。世界が裏向きに反転したようなこの感覚は、 認識論に言及している本作の歌詞内容とリンクしているようです。言わば色メガネをかけた世界ですね。 そのままライブでもおなじみ、Ambrose Kenny-Smithのブルースハープがかっこいい最高に盛り上がる人気曲M3"Cellophane(赤青の3Dメガネのこと)"を経て、M4"I'm In Your Mind Fuzz"にて、M1で提示されたメインテーマに戻り、シメ。 3rd"Float Along〜"で既に組曲形式の長尺代表曲"Head on/Pill"を生み出しており、この"Mind Fuzz組曲"ではそのアプローチをさらに発展させ、より練られて完成度の高い楽曲となっていると感じました。 ハイテンションな組曲ですが、歌詞はなんだか不穏な雰囲気で、懐疑的認識論や陰謀論、洗脳などを示唆するような内容です。
 M1"I'm In Your Mind"の冒頭においては、"Everybody's lazy when they're tired / 'Cause everybody's sucking on fluoride(みんなが疲れているときに何もする気が起きないのは、フッ素をなめているのが原因だよ)"という一節から始まります。フッ素は歯に塗ると虫歯を防ぐという、歯医者で塗られるアレですね。世界各国の行政では、水道水の中にフッ素を混入させ虫歯を減らすという施策が実際に行われていたりするそうです(水道水フロリデーション)。もちろんWHOは安全性を保証していますが、なんだか不自然でちょっと怖いですよね。しかしだからと言って疲れている時に何もする気にならないのは当たり前のことで、その現象をフッ素と結びつける論理的な根拠は何もありません。これは人の不安感に付け込んで強引に物事を結びつける陰謀論者のことを揶揄しているのでしょう。Geniusでは、"いやフッ素はマジで有害なんだよ"という主張者が現れて論争になっていますが、まあマジで危険なのかもしれないですけどそれはこの歌詞の本質と関係がないように思います。フッ素および水道水フロリデーションの危険性は私に化学的な専門知識がないので、判断はペンディングしときます。"I'm in Your Mind"という曲名はこのような陰謀論的な思想による洗脳について表現しているのでしょう。インターネットにより情報が氾濫している現代において深刻な問題です。
 M3"Cellophane"は私が幼いころ(90年代?)にあった、3D映画や絵本を見るための、レンズ部分に片方が青で片方が赤のセロハンが貼り付けられた3Dメガネについて歌っています。左右の目に入る光に差が生じるようにフィルタリング/コントロールすることで視差効果により立体感が生まれます。まあそれはどうでもよくて、このメガネをかけていると、世界がそのものの色ではない、不自然にチカチカする世界に変貌するんですよね。世界を変化させるのではなく、我々の脳、認識の側を変化させることでも、結果的に世界は変わるわけです。哲学的に言えば認識論、心理学や脳科学で言えばマインド・セットというやつですね。そして我々の認識を変えてしまうほうが手っ取り早く確実で、だから洗脳は危険なのです。
 M5"Empty"はここまでの馬鹿騒ぎの小休止といった感じで、ミドルテンポの甘〜いメンヘラ系ラブソング。耳にこびりつくメロディです。なんにもやる気が起きない意味も見いだせない虚無状態の主人公ですが、君といる時だけはそんな虚無を感じなくて済む、という内容。わかるわかる。
 M6"Hot Water"はフルート(リーダー/ギターボーカルのStu Mackengieが演奏)がフィーチャーされ、また優しい歌声が特徴的ですが、 リズムはとても軽快です。ジョギングしながら聴くのにいい曲な気がします。しませんけど。この曲もライブでよく演奏されている気がします。 ちなみにHot Waterというのは、蛙を水で満たした鍋に投入して火にかけると、蛙は徐々に上がる水温に気づかず、最終的に沸騰してそのまま死ぬ、 という都市伝説のことだそうです。この話自体は多分嘘なのですが、漸進的に広がる環境破壊や全体主義的なイデオロギーなどによって、 その異常性に気づかないまま破滅に向かっていく人類を比喩する話としてよく用いられていますね。
 M7"Am I in Heaven?"はこのアルバムのハイライト。アコースティックギターをバックにしたキャッチーなメロの甘い歌声にうっとりしますが、 突如豹変して異常なテンションの宇宙的スピード・サイケに移行する瞬間がたまりません。ライブではラストの曲として登場することが多く、 しかも間に別の曲を好き放題挟んで20〜30分くらい演奏し続けます。最高ですね。 キンギザの作品は基本的に一曲目に最高潮の曲をぶつけてくるスタイルなので、このように中盤にハイライトがある形式は珍しいのではないでしょうか?まあ冒頭の組曲も同じくらいすごいんですけど。 また、歌詞の内容としても、のちの作品でも語られるような、"人類の始まりと世界の破滅"、"人智を超えた超常的存在"というような壮大なテーマについて割と深く言及されており、重要な曲であることは間違いないでしょう。しかし、はっきり解釈するのはなかなか難しいというか、敢えて正解が出ないような作りにしてあるみたいです。まず、"世界の終わり(=Murder of the Universe?)についてのアイデアがある"、"母なる自然は太古に他のみんな(=人間?)を創造した"という歌詞から、これは名作"Murder of the Universe"に登場する、ゲロを大量に噴出して世界を破滅させたクレイジー・サイボーグ神"Han-Tyumi"によって語られている台詞だと考えることができます。"全てのレンガは永遠なる波により砂と化した"という一節は"Polygondwanaland"の主題"Clumbling Catsle"の示唆でしょう。すると曲名およびサビの"Am I in Heaven?"という問いは"Han-Tyumi"が、自身が宇宙そのものとなった世界を指して天国と称していると解釈できます。この場合肯定的な問いとなるでしょう(極めて独善的ですが)。もうひとつのもっとストレートな解釈として、気候変動や環境汚染に言及するフレーズがいくつかあることから、この母なる地球、自然はかつては楽園だったが、今はどうなの?という人間目線(というかStu目線)の問いとして解釈することもできます。この場合は否定的な問いになりますね。そのほか、同じく"Murder of the Universe"に登場する"The Lord of Lightning"目線の歌詞ではないかという解釈もあるみたいですが、これはちょっと深読みが過ぎるのかなという気がします(明示的なヒントがあったら教えて欲しいです)。でも面白い解釈ですね。
 感動的な大曲が終わり、M8~10はスローテンポの気だるいソフト・サイケ。しこたま飲んで騒いだあとの朝帰りで、サラリーマンとかが出勤している方向とは逆向きに歩いて帰宅しているときの、満足感と虚無感が入り混じったなんとも言えない気分が喚起されます。
 M8"Slow Jam 1"はひたすら心をスローダウンさせてくれと言い続けるバラードで、まあ前曲までのテンションの高さを鑑みればそりゃそうなるわと思います。"君が近づいてくると話しづらくなっちゃうんだ"というフレーズは、見つめ合うと素直におしゃべりできない的なラブソングのようでも、神に対する畏敬の念のようでもあります。
 M9"Satan Speeds Up"は神と悪魔とその狭間にいる人間を歌った曲です。神は自然というギフトを贈ってくれたけれど、人間は自然を台無しにする愚行ばかり繰り返している。その愚行を省みることやめたとき、悪魔がドアの前に立っているでしょう。という歌。甘い曲調ですがなかなか怖いですね。ドアの前に立つ悪魔というのはのちの名作"Nonagon Infinity"で出てくる合言葉"Nonagon Infinity opens the door"と関係がありそう。
 M10"Her and I"は恥ずかしくなるほどのピュアなラブソング。 ここまで、陰謀と洗脳、人類と地球の破滅、神と悪魔などハードな世界観の楽曲が並んでいましたが、最後の曲が”愛”についてなのが、 彼らの純粋で優しい人間性を感じてとても好きです。なにが一番大事かって、それは君だよ。君と僕の世界。 と思いましたが、流れを考えるとここでの"Her"とは母なる自然や神のような存在を指している、というのが正しい解釈なのかもしれないです。M5"Empty"やM8"Slow Jam 1"も、個人的なラブソングのように聴こえますが、実はそうした対象を歌っているのかもしれません。まあでも好きな人を思う気持ちっていうのは究極的には人類愛や善なる世界の希求に繋がっているものだと思います。 スタジオ作品は、やはりこういうしっかりとした着地点みたいな曲でシメられていると、いいなあと感じますね。

総評

 のちに肉付けされていくプログレ、メタル、微分音というような要素のない、初期キンギザがまっとうに作った傑作です。 今でも頻繁に聴きますし、何回聴いても楽しいです。デビュー以降衝動の赴くままにバラエティに富む作品群を次々と生み出し、捉えどころのなかった初期キンギザに楔を打つような作品です。 この方向性で展開していっても単なる焼き増しにしかならないという意味で、より先鋭的で方法論的なアプローチをとる以降のスタイルは必然のように思えます。 作品全体のバランスとしても、荒々しくハイテンションなハンマービート/スピードサイケな曲と、甘くてだる〜いソフトサイケな曲と、キンギザの作品を大きく分かつ2つの側面の曲が半々くらいで収録されていて、トータルバランスがすごくよいです。 歌詞の世界観も、壮大で厭世的かつ哲学チックな"Gizverse"の基礎となっている点で、重要な作品だと思われます。 あと、ジャケットがかっこいいです。ケレン味のあるアングラ感はキンギザのイメージにぴったりだと思います。 緑の海は環境汚染の進んだ未来、もしくは"Han-Tyumi"のゲロを表現しているみたいですね。中央のお城はのちの代表曲"Clumbling Catsle"を示唆しているのでしょうか? シンメトリーに並んでいる赤い服の悪魔みたいなのが"The Lord of Lightning"?想像が膨らむ楽しいジャケットです。 Gizverseについて深く考察するのもよし、難しいこと考えずに頭と腰を振ってもよし。キンギザらしい1枚。

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