King gizzard & Lizard Wizard Japanese unofficial fan page キングギザード&リザードウィザード日本版非公式ファンサイト

Introduction

キングギザード&リザードウィザードの魅力

h3

King Gizzard and the Lizard Wizard at Rough Trade"King Gizzard and the Lizard Wizard at Rough Trade" by p_a_h is licensed under CC BY 2.0

 ングギザード&リザードウィザードは、2010年にオーストラリアのメルボルンにて結成された7人組プログレッシブ・サイケデリック・ロックバンドである… こういう説明はWikipediaに詳しく書いてありますので、ここでは割愛します。 (機械翻訳でも十分理解できる…素晴らしい時代)しかし何が私をそんなにも惹きつけるのでしょうか。
 誤解を恐れずに申し上げれば、私にとってキンギザはProgressive Rock[Wikipedia] です。しかしそれは一般的な意味での、ジャンル的な”プログレ”ではなく、あくまでも原義的な”プログレ”として、です。 前者は、複雑な構造な曲をテクニカルに演奏することを目的としますが、後者は文字通り先鋭的な音楽を探求する実験精神を教義とするもので、特定の形式に拘ることはありません。 どちらが良いとか悪いとかではないけれども、私が好むのは後者の原義的なプログレです。Frank Zappa、Miles Davis、King Crimson、 Kraftwerk、P.I.L.、The Mars Volta…そしてキンギザはそんなプログレの流れの正統後継者と言えるでしょう。彼らは活動の中で常に新しい要素を取り込み続けており、 特に”マイクロトーン(微分音)”の導入はその最も代表的で、かつキンギザの音楽を特徴付けているものです。 マイクロトーンとは通常使用される12の音階をさらに細かく分割する手法で、ギターの場合にはフレットの間にさらにフレットを打ち込んだものを使用します。 これにより中東などの民族音楽のような、我々からすると”奇妙な”響きが生まれるわけです。 他にも、アルバム全編を通してのナレーションの導入、(Gizzverseと呼ばれる)壮大な世界観を共有し独自のキャラクターが頻出する歌詞など、 キンギザの斬新な試みは常に私たちをワクワクさせてくれます。
 またキンギザは、前述した”プログレ性”を持ちながら、同時に快楽至上主義ともとれるような”単純な気持ち良さ”を併せ持ちます。 直線的で永遠に持続するようなミニマル・ハンマービートは彼らの分かりやすい特徴の一つで、ドイツの伝説的バンド”NEU!”に影響を受けているものと思われます。 このようなミニマルビートを基礎におき、ソロを排除した執拗に繰り返されるギターリフ、韻に重きを置いた妖しいメロディの歌、シームレスな曲の繋がりによって、 キンギザの音楽は徹底的に”ダンスミュージック”です。かつてマイルス・デイビスは「踊れぬ音楽など音楽ではない」と言いました。 ちょっと言い過ぎな気がしますが、概ね同意します。
 それ以外にも、「天気のいい昼間に横になってうとうとしながら聴くと気持ちいい」ようなゆるーい多幸感に溢れた作品も多く、難しいこと考えずに楽しめるのがキンギザの魅力なのです。
 ちなみに個人的にキンギザの気に入っているところは、ツインドラム構成である、という点です。しかし、悲しいかな、二人のうち片方のドラム担当Eric Moore(Suicidal Tendancyとは別人) が2020年に脱退して、ドラマーが一人になってしまいました。まあ元々Eric氏はサポートドラマー兼バンドマネージャーという立ち位置だったのが、マネジメントと彼らのレーベルFlightless Recordの運営に 専念するということで、実際的な損失はあまりないのかもしれませんが、やはりライブでのツインドラム構成が見れなくなってしまうのが悲しいです。顔的にも一番好みのメンバーだったのに。

迷わないためのざっくりキンギザ史

h3

 に述べたようにキンギザは様々な"実験"によって多くの要素を血肉と化してきたわけですが、この実験はアルバム単位で行われることが多く、 ”今までのやり方にちょっと足してみる”ような優しいやり方ではありません。アルバム全体がひとつの試みなのです。 このようなやり方は彼らが自らのインディペンデントレーベルに所属し、音楽配信サービスを活用することで、 軽いフットワークで作品を発表できるからこそで、いかにも現代らしいなあという感じがしますが、 一方で、「作品を聴いてもどういうバンドなのか良くわからない」という事態が多発していそうです。私も初めはそうでした。 "12 Bar Bruise"と"Infest the Rat's Nest"を聴いて、その一貫性の無さに、なにこれ?と思いました。
 なので、彼らの活動の大体の流れを概説して、全容を俯瞰したいと思います。

デビュー〜Mind Fuzz(2012 - 2014)

 "12 Bar Bruise"は彼らのデビュー・フルアルバムで、若さゆえの勢いが爆発しています。 アシッドパンクと言うんでしょうか?thee oh seesのフォロワーバンドかな?という感じで、あんまり私はピンときませんでした。 しかしながら、西部劇をフィーチャーしたナレーション入りの変な2ndアルバム"Eyes Like the Sky"、 スペーシーなサイケバンドとしての実力を開示した3rd"Float Along"、いつの時代のヒッピーだよと突っ込みたくなるヘッポコ音響空間の4th"Oddment"と幅広い作品群を展開し、 文句なしの名盤5th"I'm in Your Mind Fuzz"を発表して早くもガレージ・サイケバンドとして確固たる地位を築きます。

Nonagon Infinity(2015 - 2016)

 "Mind Fuzz"という名盤を世に出した彼らですが、まったく気負うことなくマイペースに変な作品をリリースし続けます。 「あんなんいつでも作れるし。」とでも言いたげに。 "Qurters!"はその名の通り10分ぴったりの曲を4つ詰めた、ピザみたいな、だるい雰囲気のコンセプトアルバム。 農場で録音されたアコースティック・ゲロ甘ソフトサイケの"Paper Mâché Dream Balloon"。 ゆるーい雰囲気のリリースをはさんで、歴史的名盤”Nonagon Infinity”を発表します。 一転して悪魔崇拝風の終末論的世界観と地獄の如く終わることのないスピード・ヘヴィ・サウンドはメタルファンも含め世界中で賞賛されました。 このアルバムがキンギザのベストと言う人は多いのではないでしょうか。

Polygondwanaland(2017)

 "Nonagon Infinity"の成功に満足することなく、2017年はなんと5枚のアルバムをリリースしました。頭おかしい。。。 内容的にもかなり充実した作品ばかりです。 "Flying Microtonal Banana"は今ではすっかり彼らの代名詞となった"微分音"を初導入した作品です。地味にライブでの頻出曲が多い気がします。 "Murder of the Universe"は"Nonagon Infinity"の続編とも言える壮大な組曲のプログレ・メタル作品で、個人的にはこれが一番好きだったりします。 "Sketches of Brunswick East"は同じオーストラリアのサイケ・ポップバンドMild High Clubとの共作。楽しそうなゆるい雰囲気がいいです。 "Polygondwanaland"は彼らのキャリアを総括するような完成度の高い名盤です。緻密に計算され組み立てられた作品で、 もはや初期の"何しでかすか分からない威勢のいいガレージサイケバンド"という面影は一切ありません。 "Gumboot Soup"はアウトテイクの寄せ集めでファン向けのサービス作品ですが、なかなかいい曲も入っています。

K.G.L.W.(〜現在)

 2017年の怒涛のリリースによって世界中にファンを獲得したキンギザは、せわしなくライブ・ツアーを行いながら、作品を作り続けます。 2019年発表の"Fishing for Fishies"と"Infest the Rat's Nest"はそれぞれこれまでのスタイルとは全く異なる実験作(ブギとスラッシュメタル)で、彼らの懐の深さを再認識させられました。 この年にはフジロック'19にて初来日を果たしました。私は山が苦手なので行きませんでした。日本でのライブは今のところこれのみです。単独ライブをやってほしい。 そして2020年と21年には、連作の"K.G."と"L.W."を発表。 リジットな変拍子ミニマル・ビートと繰り返される微分音リフに徹底的に拘ったその音楽はまさにキンギザファンの期待に応える作品で、 世界的バンドとなった彼らの実力を十二分に証明したと言えるでしょう。

で、結局どれを聴けばいいの?

h3

 け足で彼らの足跡を追ってみましたが、書いてみて実感したのは、流れだけを説明してもなんだかなあ、、、ということ。結局のところ音源を聴いてぶっ飛んでほしいわけです。 ということで、とりあえず初めに聴いて欲しい作品を挙げてみます。
 本当のところを言えば、個人的な最高傑作は"Murder of the Universe"なんですけど、これはかなり賛否両論ある問題作なので、選んでいません。以下の3作を聴いて、キンギザかっこいいな、と思ったらぜひ聴いてみてください。

I'm in Your Mind Fuzz

I'm in Your Mind Fuzz
"I'm in Your Mind Fuzz" from Discog

 キンギザの名声を世に知らしめた最初の傑作です。サウンド的にはローファイなガレージ・サイケ。とにかく冒頭からぶっ飛ばしていて、 M1からM4のひと続きの"Mind Fuzz組曲"は、ダンサブルなハンマービートとご機嫌なリフがこだまする最高にハイテンションなキンギザ流ファンファーレ。 もう、気分が高揚しすぎて涙が出てきます。また、M7"Am I in Heaven?"はライブの最終曲として定番で、ああ、生きていてよかった、と思える多幸感に溢れた名曲です。 そして最後の3曲は祭りの後、というような気だるい夜明けのような雰囲気で終わります。小細工なし、シンプルな名盤。

Nonagon Infinity

Nonagon Infinity
"Nonagon Infinity" from Discog

 衝撃のプログ・サイケ・メタル。キンギザがメタル要素を最初に取り入れた作品で、とにかくディストーショナルでスピード感MAXのサウンドが勢いを一瞬も止めずに容赦なく襲いかかってきます。 "Mind Fuzz"でみせたシームレスな曲展開は本作品で極限に至り、仕込まれた"あるギミック"によって再生機の停止ボタンを押すことすら拒絶されます。 まさに"無限"地獄。キンギザでもっとも激しい作品ですが、それゆえに聴いているとひどく疲れます。それでも是非爆音で聴いて欲しいです。 M1"Robot Stop"は私がキンギザに開眼した思い出深い曲です。この曲からM4"People-Vultures"までの流れはキンギザ史上最も 爆発力のある過激なシーケンスであることは間違いないでしょう。

Polygondwanaland

Polygondwanaland
"Polygondwanaland" from Discog

 キンギザのひとつの到達点、金字塔と言える作品。特にM1"Clumbling Castle"は、プログレとしてのキンギザの正当性を証明してみせた誰にも文句の言えない1曲でしょう。 何かひとつだけキンギザの曲を教えて、と言われたら、多分これを選びます。 飛び道具やフェイントのような要素は全くと言っていいほど無く、リスナーとがっぷり4つで正面から組み合うような、非常に真面目な作品です。 暴れたくなるようなテンションの高さも、ヘロヘロでラブアンドピースなサイケ感もありません。 そういう意味ではあんまりキンギザらしくないような気もしますが、ヒッピーみたいなやつがたまにビシッとスーツを着込んだら、意外とかっこよくてキュンときた、みたいなことありますよね。 そういう作品だと思います。

とりあえずサブスクで聴いてみよう

 Spotify、Apple Music、Youtube Music、Amazon Music Unlimited、TIDAL…現代には腐るほどの定額音楽配信サービスがありますが、 恐らくどのサービスにもキンギザの全作品が登録されているはずです。 パソコンにアンプを繋ぐなどしてできる限り良い音質で、爆音で聴いてみましょう! ちなみに私はApple MusicとTIDALを使っています。 TIDALは日本からはごにょごにょしないと利用できないですが、CD相当の品質でストリーミングできるのでネットワークオーディオ環境のある方にはおすすめです(ただしキンギザはハイレゾ音源は配信していません)。 どのサービスにもお金を払っていないよ、というアンチ現代資本主義なあなた(そういうひと好きです)も、"Polygondwanaland"は著作権フリーの作品となっており(やろうと思えばレコードを刷って販売もできる)、 公式HPから原盤品質でDLできますので試しに聴いてみましょう。 他にもOfficial Bootlegerというプロジェクトで、公式HPからデモ音源やフルのライブ音源を無料でDLできます。気前がいいですね。

Back to head.