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K.G.

K.G.
"K.G." from Discog
2020年11月20日発表
No.TracklistTime
1.K.G.L.W1:36
2.Automation3:29
3.Minimum Brain Size4:18
4.Straws In The Wind5:41
5.Some Of Us3:52
6.Ontology3:58
7.Intrasport4:12
8.Oddlife4:57
9.Honey4:33
10.The Hungry Wolf Of Fate5:07

期待のハードルを難なく超える"成熟した"キンギザ

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 して"Nonagon Infinity"や"Polygondwanaland"のような重さのある大作ではないのですが、すごく聴きやすく、各曲がシングルカットできるレベルで、平均的に高いクオリティの楽曲が並ぶのが本作だと思います。コンセプトとしては、"微分音調律の探求-第2弾"、名作"Microtonal Flying Banana"が微分音を最初に本格的に突き詰めたコンセプトの作品(第1弾)で、これはその続編ということだそうです。とは言え他作品でも頻繁に用いられている微分音は既にキンギザの音楽に欠かせない要素の代名詞となっており、完全に自らのものにしてしまっている感はありますが、本作ではさらに突き進めて、微分音でありながらポップでアコースティックな優しいメロディ(M9"Honey"など)やテクノ/ディスコミュージックへの応用(M7"Intrasport")などの離れ業を成し遂げています。とにかく全ての曲のスケールが徹底的に微分音で構成されているので、連作"L.W."まで繋げて一気に聴くと、ゲシュタルト崩壊というのか、もはや何が微分音で何がそうじゃないのかよく分からなくなってくるほどです。本作が微分音チューニングのコンセプトアルバムであると発表され、キンギザファンは狂喜乱舞しました(多分)。"Flying Microtonal Banana"は彼らの作品の中でもかなりの人気作で、その収録曲はライブで非常に人気があり頻繁に演奏されています("Rattlesnake"、"Doom City"、"Nuculear Fusion"、"Billabong Valley"など)。ファンはこうした曲を期待したはずです。また、前作にあたる2019年発表"Fishing for Fishes"、"Infest the Rat's Nest"はどちらともキンギザとしてはかなり問題作で、いい作品ではあるのですが、ブラインドで聴いたらキンギザって分かるか自信がなくなるくらい、皆が期待しているものから意図的にハズした作風でした(ブギとスラッシュメタル!)。まあそんな姿勢もキンギザらしさではあるんですけど。そんなわけでファンとしては、なんだかんだ言ってもやっぱりキンギザっぽいの聴きてえ!というフラストレーションが溜まっていたのが2020年だったわけなんじゃないでしょうか。そんな中、新型コロナウイルスの影響もあり、リモート作業で録音が進められたそうで、先行シングルもデジタル配信で続々とリリースされました(“Honey,”、“Some of Us”、“Straws In The Wind”)。この3曲を聴いて、うーんなんか正直物足りないなという印象で非常に不安だったのですが、リリース直前の"Automation"のYoutubeアップロードで腰を抜かしました。これだよこれ、こういうのが聴きたかったんだよ、と一人で小躍りをしつつ高揚する感情で少し涙が出ました。リリース後、蓋を開けてみればこれが素晴らしい出来で、いまいちだと思ってたシングル3曲も、アルバムの中の流れに配置されることで別物と言ってよいほど素晴らしい楽曲に聴こえます。とは言えやはり私が特に気に入っているのはシングル以外の楽曲。特に"Ontology"、"Intrasport"、"Oddlife"あたりがものすごくお気に入りです。というか捨て曲がないです。歌詞は"Polygondwanaland"や前作"Infest the Rat's Nest"のようなヘヴィな物語形式ではありませんが、そのことによって曲のバラエティ性が豊かで気軽に聴きやすいです。長い曲もないですし。かと言って日和ったわけでは全然なく、これまでになかった新しい音楽的要素も随所で見られますし、歌詞としても、新型コロナとそれを取り巻く社会情勢を反映した、中々ハードなメッセージが提示されています。具体性という意味では、これまでで一番攻撃的な歌詞と言えるかもしれません。

全曲解説

 M1"K.G.L.W"は本作の導入、序曲にあたる楽曲。本作のひとつの特徴であり多用されている"微分音チューニング・アコースティックギター"により中東音楽なんだかチベット仏教なんだかインドの蛇使いなんだか、そんな雰囲気の怪し過ぎるメロディが鳴り響きます。この旋律がとにかくクセになるんですよね。聴いてから二日くらい頭にこびりついて離れませんでした。宗教的で荘厳ですごくワクワクします。海外では"Flying Microtonal Banana"収録の"Billabong Valley"の主題の変形では?とか、同作の最終曲のインストの旋律を逆さまにしたものだとかいう指摘がありました。確かに言われてみればそんな気がします…全然気がつきませんでした、自分の音楽センスのなさが悲しいです。
 M2"Automation"はいきなり今作のハイライト、いつもの手口ですね。前曲の宗教的荘厳さで身がピシっと引き締まっていたところで、まず裏/表が4拍子ごとに入れ替わるパターンの、ビシビシした音色が痺れる正確無比なドラム、そこにかっちょすぎるディストーションギターの微分音リフ、珍しくコブシを効かせて動きまくるベースラインが入り、もうたまりません。最初に思ったのはドラムの音作りがすごく好みだなということで、強い音圧とアタックを効かせてサステインをごっそり削り落としたミニマルな、一発の重さがあるビシバシ感がめちゃくちゃ気持ちいいんですよね。"Polygondwanaland"あたりからそういう傾向は見えていましたが、それ以前の作品のハンマービート的ドラムサウンドが流しそうめんのようなドライブ感だったのに対して、機械時計の歯車が高速でカチカチと回っているイメージと言えばいいんでしょうか。今作からはライブでのサポートドラマーだったEric Moore氏が脱退し、Michel Cavanagh氏のシングルドラム体制になったわけですけど、それに合わせたのかは分からないのですが、確かにこの音の方向性はツインドラムではなくシングルドラムで生きると思います。ベースの音作りや演奏も過去作とはかなり変わっている印象で、ベースに詳しくないのでうまく説明できないですけど、音が太くて前に出てきている印象があり、ミニマルなフレーズを正確に繰り返すバンドサウンドの屋台骨的な役割だったのに対し、今作では歌うようにメロディアスなベースラインが主張しまくっています。YoutubeのLucas氏の解説動画を見ると、エフェクターはElectro-Harmonix社の傑作Big Muffを使用しているようで、倍音成分の豊かなぶっとい音はやっぱりね、という腑に落ち感。大学時代お金が無かったので回路図を入手してBig Muffコピーをチマチマはんだごてと蛇目基盤で作っていたのを思い出します。結果的に総体的な音の印象として、各楽器の主張度が拮抗している混沌さと、同時に、それぞれが正確に重ね合わせられているパズルのようなカッチリさを感じますね。 歌詞は、おそらく"Murder of the Universe"のサイボーグ"Han-Tyumi"の誕生前夜、人間が生存のために機械化/自動化されていく世界の描写であると思われます。"Infest the Rat's Nest"とも同じ世界観ですね。実は、本曲"Automation"は元々ITRNの収録予定曲だったらしく、デモ曲集"DEMOS VOL. 1. MUSIC TO KILL BAD PEOPLE TO"にそのデモ版が入っています。笑っちゃうくらい原型がなくて、デモ版はまさにITRNらしいゴリゴリの超速スラッシュメタルです。もはや歌詞が同じっていうだけの別曲ですね。まあそんなわけで歌詞の世界観はまんまITRNで、この"K.G."ではかなり浮いています。 第2バースの"Superorganism / Caused a schism / bending light through prisms"の韻の踏み方がめちゃくちゃ好きです。絶対口ずさんでしまいます。微分音の神秘的でねっとりとしたメロディラインと、抑揚の抑えられた絶望感漂うロボット的な歌い方と、美しい音韻と、ディストピアSFな歌詞世界が完璧な調和を生み出しています。"Javascript Person"というフレーズも面白い。Javascriptはプログラム言語の一種で、Webページの動的なデザイン(Google Mapみたいなのとかです)に主に使われますが、かなり汎用性の高い言語で、各PCのブラウザがその場で解釈し実行するインタプリタ言語なのでどんな環境でもぱっと書いてぱっと実行できるんですよね。機械化された未来人間というのはこういうユニバーサルな電脳の仕組みが必要不可欠でしょう。いちばん興味深い一節は、"Human comet dinosaur inside a simulation"というところ。これは意味するところがなんなのか解釈が色々ありそうですが、私は、人間はコンピュータシミュレーションで地球に隕石を落として氷河期の到来と恐竜の絶滅を計算しているが、同じように我々人間もシミュレーション上の存在で、高位の知的存在によっていずれ絶滅させられる、という意味なのかなと思いました。シミュレーション仮説という世界論ですね。実は一番可能性の高い世界仮説なんじゃないかって思っています。論理的に否定しようがない命題なのでアレですけど。コーラスではひたすら平坦な音程で"Automation"と繰り返すだけのボーカル、それと対比してどんどん上昇していくギターとベースの音程が、淡々と人間性を無視して進んでいく機械化とシンギュラリティ(AIの知性が人間のそれを上回る特異点。これを上回ると機械が意思を持って機械を生み自己増殖してとんでもないことが起こるかもしれない)への漸近を表現している…ような気がします。 とにかく、こんな曲を聴きたかったんだ!という素晴らしい曲ですが、意外と曲は短く(キンギザにしては)あっさり終わってしまいます。コンパクトに密度を高めるという志向は前作ITRNから目立ってきたキンギザの新しい側面ですね。でも本曲以降にも遜色ない名曲がどんどん出てくるのが今作のすごいところです。
 M3"Minimum Brain Size"は前曲のバリエーション的な曲です。最初にインパクトをバーンと提示して、そこから少し地味でマニアックな展開に移行していくというのは"Nonagon Infinity"のM1"Robot Stop"〜M2"Big Fig Wasp"の流れと同じですね。作曲はCavanagh氏とJoey氏、ボーカルはJoey氏で、ここのところStu氏以外のクリエイティビティも目立ってきましたね。いいことだと思います。歌詞がすごく具体的な攻撃性を持っていて、確かにStu氏はこういう歌詞を書くイメージがありません。もっと遠回しでシニカルです。で、内容はおそらく、ネット上で徒党を組んで気に入らない対象を滅多うちにするようなイナゴのような匿名多数者を揶揄するメッセージですね。確かにSNSの発達とともに差別主義者やネット右翼みたいのが目立ってきましたよね。"Minimal Brain Size"というのは、日本人にはあまりピンとこないですが、英語圏では最大級の貶し言葉みたいです。直訳すれば頭スカスカの低脳ってことなんでしょうが…人間の脳というのは進化とともに中心部から外側に徐々に拡大していっているので、中心部に近い大脳辺縁系といった部分に原始的な機能、恐怖や快楽、記憶などの本能を司る部分があり、それを中心にして外側に囲むように大脳皮質という社会的な活動をする上で機能する理性を司る部位が拡大していきました。他者を攻撃したり差別して排除する感情は本能的なもので誰しも持っていて、人間として大事なのはその感情を大脳皮質の理性でコントロールすることなんですよね。匿名だからリスクがないと言って本能の赴くままに他人を傷つけるような人間は、原始的な脳しか持ってないような"Minimal Brain Size"であると批判しているわけですね。確かに、人間の人間たる条件というのは、他者を思いやる想像力だと思います。
 M4"Straws In The Wind"は微分音チューニングによるアコースティックギターがフィーチャーされた、耳に残るポップさと哀愁の漂う名曲です。リードボーカルはAmbrose氏が担当してます。彼の踏まれたネズミのような歪んだ甲高い声と、流麗な歌唱力はほんとすごいですね、大好きです。こんな最上級の武器を隠し持っているのだからキンギザはずるいです。Cook氏のシタールや、ハンマリング/プルオフを多用する微分音ギターの迷宮的なフレーズが異国情緒(どこの国かは不明)を醸し出しており、ベースはシンセのように、うねることのない平坦で抑制的なデジタルな音作りで、かつ音の隙間を意図的かつふんだんに作り出しており、まっことに気持ち良いです。"Straw in the Wind"というのは、MVでビニール袋などのゴミが風に舞ってメンバーたちに纏わりついている描写から、近年問題になっているマイクロプラスチックの環境汚染に言及しているのかもしれません。つまりStrawは藁ではなく文字通り飲み物を吸うストローのことですね。もちろん"Straw in the Wind"という熟語は"風見鶏、風向き/社会動向を示す予兆"という意味が一般的で、ダブルミーニングです。歌詞の内容としては、メディアの扇動により資本主義的な大量消費が促され、それによる資本はメディアの力をさらに強大化するというフィードバックループに陥っている現代社会を揶揄しているもののようです。暗黙の不文律となった大量消費を象徴するものが"風に舞うストロー"というわけですね。最近公開されたMelbourne'21のライブ映像では、この曲がスイングするジャジーなリズムアレンジで演奏されていました。
 M5"Some Of Us"は前曲とうって変わってハードで恐ろしい曲調で、作曲はギターのCook氏。意表をつく頭がおかしくなりそうな分裂症的な微分音フレーズがとにかく印象的です。微分音のシンセも目立っていて、間奏の"てれれってってー・ピョッピョー"という部分、ちょっと間抜けでかわいい感じもしてすっごく好きです。歌詞も非常に深淵な内容で、"歴史は繰り返す"、"人間は自らの悪徳を省みない"というGizzverse的な命題が掘り下げられています。 "Ancient Thracians from lost nations / Long gone people understand everything"という一節でトラキア人が出てきます。キンギザの歌詞によく出てくるトラキア人とは、紀元前3千年以上前から東ヨーロッパに住み、紀元前後あたりで周囲の国に支配され消滅した民族で、高度に発達した宗教・儀礼・霊魂/生死の概念や金属加工技術が有名ですが、直接的な記録はほとんど残っていない"消えた民族"です。ヘロドトスは「歴史」の中で、「トラキア人は子供が産まれるとこれからの不幸を数え上げ悲嘆に暮れ、人が死ぬとその永遠の幸福の訪れを祝福する」と記述しているそうです。そんな達観した知性をもつ"Some of Us"は死に絶え消え去り、愚直に地球、現世の支配を進める"Some of Us"が現在の我々である、というような皮肉が読み取れます。そして、いずれにしろ全ては最終的には灰燼に帰す、とも。"Ageless microbes reveal xenophobes / Endless plague thus infecting everything"という一節は新型コロナウイルスによって外国人排斥(Xenophobia)が顕現するようになった昨今の世情を表現しています。感染症を忌避し異人種を遠ざける本能は狩猟採集時代からDNAに刻み込まれた本能です。このような本能により異なる神を信仰する異教徒は滅ぼされトラキア人も消滅したわけで、しかし多様性を排除し単一の価値観によって固められた世界に待ち受けるのは破滅でしかないでしょう。戦いの歴史の反復で"Some of Us"は死に"Some of Us"は生き残るが、結局どちらが生き残っても生物学的な優劣、意義はなく、どうせみんな死ぬという無常的世界観というわけですね。
 M6"Ontology"は前曲から繋がっている後半戦みたいな曲で、個人的にはこっちが本命ってぐらい大好きな曲です。繋がってはいますが全曲とは雰囲気がガラッと変わり、なんだかポジティブで楽しい曲調です。"フー!"という叫びから始まる、底抜けに楽天的で全てを肯定してくれるようなインストコーラスはもう本当に感動的です。ここまで結構陰鬱な内容の曲が並んできたので、余計に開放感がすごい。また、曲が終わったと思わせておいて、銅鑼がバアーンと鳴り響いて微分音ばりばりのギターソロに続いていく展開は、本当に見事。この"銅鑼ブレイク"は本作で一番好きな瞬間です。"Ontology"とは存在論という哲学用語で、プラトンの"イデア論"や、有名なデカルトの"我思う故に我あり—Cogito ergo sum."というような、事物の存在の仕方、原理を厳密に定義しようという試みのことですね。現代では素粒子物理学でそういう疑念にはほぼ決着はついていますが、じゃあ何故無から有は生じたの?みたいなことは永遠の謎ですね。この歌詞でも、自分のいる世界や自分の存在理由に何故?を繰り返しても、それは最終的には答えのない不毛な問いだから、もっと視野を広げて自由に楽しめ!というポジティブなメッセージが表現されています。いや本当に哲学とかのめりこんで分かったのは、生きていく上でなんの役にも立たないってことだと思います。でも楽しいから哲学書を読むんです。最近本屋で、哲学をビジネスに役立てるみたいな本が売っていましたが、ちょっと笑ってしまいました。それってラブレターを書くために形式論理学を猛勉強するような滑稽さなのでは。
 M7"Intrasport"は本作の中でも一際異彩を放っている、微分音によるディスコテックです。リードギターのJoey氏の作詞作曲で、新型コロナでひたすら自室に引きこもっていた時期に一人で作って持ちこんできた曲だそうです。レゾナンスの効いたアシッドなシンセベースが懐かしい感触で、そこに重なる妖しすぎる微分音シンセのメロディがたまりません。打ち込みの曲ですがまったくキンギザ味が損なわれていないのが流石です。常々キンギザの作曲の方法論というのはテクノ的だなあと感じていましたが、この曲でそんな考えが確証に変わった気がします。"Intrasport"という言葉はとにかく謎です。"Intra-"という接頭辞は内部の、とか同種間の、とかいう意味で、"sport"は文字通りスポーツとか楽しみのための活動とかゲーム、という意味で、海外では人類の内輪の殺し合いを示しているという考察を見かけましたが、確かにGizzverse的には馴染む概念ですが、歌詞を読む限りそんな壮大なことに言及しているようには思えないんですよね。むしろ、自室に引きこもり続けることで、人との交流が途絶し自分の精神世界にのめり込んでいき、平衡感覚を失っていくような、孤独から来る人間性の消失といったテーマのように感じます。まあそれも、争いはディスコミュニケーションから生まれるというメッセージで、殺し合いという解釈もありでしょうね。
 シームレスに移行するM8"Oddlife"、これもすっごい好きな曲です。本作では一番かもしれません。キンギザにしては珍しい美しい音色のシンセやピアノが控えめに絡み合い、その上を優しいメロディアスな歌声が流れていき、軽快なドラムが曲を引っ張っていきます。"Oddlife! Woo!"という掛け声とともに始まる微分音ギターソロがとにかくカッコ良すぎます。涙腺にきます。キンギザにしては珍しい、けっこう長く主張の激しいソロですね。途中掛け合いのようにシンセがちょいちょい顔を出すのがまた素晴らしい。そしてなんといってもAmbrose氏のボーカルセクション!ラップのように 矢継ぎ早な歌唱で曲のテンションが一段上がり、さらにそこにギターソロが絡んでカタルシスに至ります。最高です。歌詞としてはキンギザがワールドツアーをやりまくっている多忙な生活を描写しています。これは"Nonagon Infinity"の"Robot Stop"を彷彿とさせるような、Stu氏が自分の内面を吐露するレアなタイプの歌詞ですね。でもちょっと印象が違って感じるのは、その過酷な生活を"Odd life(数奇な人生)"と、ちょっとふざけながら肯定的に表現しているからでしょう。ミュージシャンとして、人として、成長しているなあって思います。上から目線ではなく単に尊敬と羨望の念です。Youtubeで無料公開されたライブ"Melbourne '21"では、イントロ"K.G.L.W."からの1曲目が本曲"Oddlife"でした。これは死ぬほどかっこよかった。スタジオ録音よりも演奏のテンションは高いし、Stu氏がマイクスタンドに取り付けたボーカルエフェクターのつまみを回して自分の声にフィードバックディレイをかけまくるのが最高でした。冷静と情熱の間、みたいな曲自体のテンションが1曲目にすごくあっていると思います。
 M9"Honey"は、これも微分音チューニングのアコギを主軸にした素朴で優しい曲です。リズムはシンプルですが7拍子の変拍子、ハンマリングを多用し美しい主旋律を奏でるギター、主旋律と対位法的な関係で歌うように動きまくるベースの絡み合いがとても気持ち良いです。何と言ってもその歌詞。世界がボロボロに壊れても君のことを考えれば生きる価値はあるよ、というラブソングというか、人類愛ソングというか、文字通り激甘〜いメッセージソングなんですね。そしてHoney=はちみつは古代から抗生物質が発明される現代まで、その抗菌、殺菌性から治療薬として使われてきました。それは現在猛威をふるって世界をどん底に陥れている感染症に対抗する手段としての象徴を意味しているのだと思います。ラストにダイレクトなラブソングをぶちこんでくるのは名作"I'm in Your Mind Fuzz"を思い出させます。そういう構成とても好きです。
 M10"The Hungry Wolf Of Fate"はシメの最終曲ですが、アルバムにまったく馴染まないヘヴィで陰鬱なストーナー・メタルです。こういうところがキンギザのひねくれてるところで、ある意味とても"らしい"感じがします。けど正直この曲のよさは分からないですね…Stu氏の趣味を強引にぶっこんだ印象です。何か起きそうな期待感はどんどん膨らませられるんですが、結局いまいち盛り上がらないまま終わるんで、なにこれ…て思いました。その時は"K.G."が前半で、もう一枚出ること知らなかったんです。だから何回か聴いて、尻切れトンボの終わり方から、あ!これ多分もう一枚出るんだな! "K.G."だから"L.W."か次は!って気づいた時は嬉しかったです。確かに繋げて聴くと、"L.W."の1曲目に完璧に繋がるんですよね。これもまたキンギザの遊び心ですね、素敵。

総評

 奇妙さとポップネスのバランスが一級品、間が空いてキンギザを待ち望んでいたファンも、初めて聴く人も、どちらも十二分に満足できる名作だと思います。そしてこれは前半戦に過ぎず、続編の"L.W."が待ち構えており、こちらも"K.G."に負けず劣らず名曲揃いです。クリエイティビティどんだけ。皆の満足する作品はいつでもいくらでも作れるよ、というキンギザの地力、腕力が完全に証明されたと言ってもいいのではないでしょうか。新型コロナの影響でリモートでの制作になったそうですが、もともとキンギザは初めて普通にレコーディングしたのが5作目だったりして、変則的な制作プロセスに慣れていそうですよね。作詞作曲のパワーバランスもStu氏以外のメンバーが精力的に関わっていて、それが各曲のバリエーションの豊かさに繋がっていそうです。そういうのはバンドの強度を高める上で大切なことですよね。最終曲でのはっきりしない終わり方だけが不満で、普通に盛り上がる気持ちいい曲でシメてくれよ〜という気持ちはありますが、まあそんな一筋縄ではいかないところがキンギザらしさ。ライブ"Melbourne '21"では、"Flying Microtonal Banana"、"K.G."、"L.W."の曲で完全微分音セットリストのライブをやっていました。このセットリスト、キンギザの色んな時期のライブと比較しても、めちゃくちゃ好きです。前半は微分音、後半はプログレ・メタル系で統一したライブとかも過去にやっていましたが、そういうのもまたやってほしいですね。全体としてとても聴きやすくて真面目な作品だったので、次作はまた変態性の高いクレイジーな作品なんかを期待してしまいます。どんな展開をするのか、本当にワクワクします。

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